三島由紀夫とUFOの意外な出会い「円盤研究会の熱心な会員だった!」 #3

s-UFO14そして、三島は57年6月の同会の円盤観測会にさっそく参加。双眼鏡を熱心にのぞきこみ、東京の空に円盤を探し続けた。荒井さんは、「ほかにも有名人の入会はあったが、会費だけという人が多かった。三島さんは観測会に参加するほど熱心でした」と懐かしそう。

この入会をきっかけに、三島はあちこちで円盤について書き記し、話している。まず、前述の円盤研究会に寄せたエッセー「現代生活の詩」を紹介しよう。

これからいよいよ夏、空飛ぶ円盤のシーズンです。去年の夏は、熱海ホテルへ双眼鏡ももって行って、毎夜毎夜、いはゆるUFOが着陸しないものかと、心待ちにのぞいてゐましたが、ついに目撃の機会を得ませんでした。その土地柄からいっても、ヘタに双眼鏡に凝っていたりすると、疑はれて困ります。世間はなかなか高遠なる趣味を解しません。

宇宙に関するファンタスティックな趣味は、少年時代、稲垣足穂氏の小説によって養はれたもので、もともと科学的素養のない私ですから、空飛ぶ円盤の実在か否かのむづかしい議論よりも、現代生活の一つの詩として理解します。

今年の夏は、ハワイからアメリカ本土をまわる予定ですから、きっと円盤に遭遇するだろうと、今から胸踊らせてゐます。南十字星なんかより円盤の方がずっと強く、私の旅へのあこがれを誘うのであります。

以上が全文だが、UFOを「現代の詩」というあたり、ロマンチストぶりがうかがえるではないか。では、このアメリカ旅行の成果はどうだったろうか。帰国後、周囲に、「僕は円盤を信じている。アメリカは日本よりしばしば現れるらしいが、とうとう会わずじまいさ。そのために旅客機も夜の便を選んだりしたんだが…。」ともらし、残念がったという。旅客機をあえて夜の便にするなど、円盤に対する想いの入れ方は相当な感じがする。(つづく)

参考文献 UFOこそわがロマン 荒井欣一自分史

Share Button