かけがえのない同志「南山宏氏」#2

010701sonota383-trans私がかりに、多少なりとも他人様のお役に立てる仕事をしたといえるなら、それは「UFO事典」を書いたこと位だが、生来怠け者の私をあの仕事に向かわせた原動力は、ある時荒巻さんから受けた「UFO研究に必要なのは、まずデータをきちんと整理した事典ですよ」という忠告と励ましだったのだ。少なくともあの本を出した時点では、あの種の本は世界でも初めての試みだったのである。

今回はUFO研究会の「同志」のことを書く。おわかりのようにこの分野は、かつてのSF界同様、体制的な科学界からいまだに無視されて少数派の悲哀をかこっている。だからSFと共通する要素は多いのだが、それだけではない。今の若いSFファンやUFOファンは知らないだろうが、わが国のSF界とUFO研究界は名実ともに「異種同根」、切っても切れぬ因縁があるのだ。

知る人ぞ知る、日本のSF界の源流は20年前の同人誌「宇宙塵」にあり、ここから現役SF作家の大半が輩出している。私もじつはそこの会員だった。ところが、この同人グループが結成されたそもそものきっかけは、その後無数に出来たUFO同好会の草分け的存在「日本空飛ぶ円盤研究会」内でも分派活動までさかのぼるのだ。当時の会員の中でとくにフィクション(そのころは空想科学小説といった)にも関心の深かった柴野拓美(小隅黎)、星新一ら有志が中心となって、「宇宙塵」の会が発足したのである。

だれあろう、あの星さんは、「元UFO研究家」であり、当時立派な研究論文までモノにしているのだ。たしかUFOはどこから来るか、といったようなテーマだった。あの頃の星さんは本気でUFOを信じていたらしい。ウソのようなホントの話。もっとも最近は私の顔を見るたびに、「UFOの正体わかった?ぼくは幽霊だと思うがね」とおっしゃるのが口癖だから、関心はあいかわらずあるのだろうが、考え方はだいぶ変わったらしい。

SFとUFOの因縁話で思い出すことがある。だいぶ以前だが、ある雑誌の「UFO特集」で小松左京、豊田有慎、平井和正のお三方と座談会をやらされた。その時発見したのだが、彼ら三人は海外SFを読み始める前に、例のアダムスキーの「円盤同乗記」を読んでUFOに興味を惹かれたという。私は逆に海外SFを読んで感動し、「宇宙塵」に入会してからアダムスキーを読んだのだから、現在の彼らの立場と私の立場から見れば、話はまるでアベコベなわけだ。(つづく)

参考文献 UFOこそわがロマン 荒井欣一自分史

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