かけがえのない同志「南山宏氏」#1

010301nori016-transUFO研究家の南山宏さんが昭和55年「小説CLUB」7月号に掲載した随筆の内容です。

出版界のパーティーなどで見知らぬ人に紹介される時、紹介役の友人(たいてはSF仲間だが)は決まって私の名を告げる前に、ほんの一瞬ふっと戸惑いの表情を見せる。私の職業をひと言で表現できそうな都合のいい分類に迷うらしいのである。

私自身適当な表現が見つからなくて困っているのだから、それも無理はない。以前なら、それでもちっぽけなSF雑誌の編集者だったから、そんな迷惑をかけなくとも済んだのだが、現在は天下晴れて自由の身なので、パーティーのたびに紹介役を困らせている。

毎日自宅で原稿を書く(怠けさえしなければ)のが仕事だから「物書き」に違いない。ときたまSF作家と紹介されることがあるが、少なくとも小説家ではない。よく取材に出かけて読物を書くが、ノンフィクション・ライターだのルポライターだのといわれるとこそばゆいし、だいたいUFOがテーマだからイメージが違い過ぎる。

海外のSF作家や超常現象もののノンフィクションの翻訳もやるが、量から言ったら三分の一程度だし、好きなものしかやらないから翻訳専門ではない。超常現象(たまにUFO)研究家と呼ばれると、カスミでも食っている変人みたいで申し訳なくなる。実作家でない限り、また友情を壊したくない限り評論・解説の類は絶対やらぬと心に決めているので、SF評論家扱いはこちらからお断りする。

要するに、SFとUFOの間を行ったり来たりしているイヌみたいな存在なのである。だが、そのおかげで私は「同志」的友人にはたくさん恵まれている。前号で荒巻義雄さんが書いておられたように、かつてSF界は既成文壇から長く認められなかった。少数派であり、だからこそ「同志愛」が芽生えた。その友情がSF界隆盛の今も、仲間同士の絆となって続いている。荒巻さんは私を実物大よりはるか以上に評価して下さったけれども、私のほうこそ彼に感謝していることがある。(つづく)

参考文献 UFOこそわがロマン 荒井欣一自分史

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