私は円盤をみた(森田たまさん)

010301nori020-trans空飛ぶ円盤研究会の会員だった森田たまさんが、会の機関誌に投稿した内容です。

「作家 森田たまさんの場合」

昭和27年8月1日午後9時ちょっと過ぎ、私は樹立ちの深い鎌倉山の石段を仄かな月明かりをたよりに登っていた。すると不意に私の足許が真昼よりも明るい、しかも青い光にサッと照らされた瞬間、反射的に私は空を仰いだ。

真っ青に透き通るような飛行機が悠々と私の頭上を通ってゆく。大きさは4メートルあまり、魚形水雷のような形の尖端から一尺ほどのオレンジ色の火を噴いていた。その火の真ん中は紅く、両端はオレンジだった。真っ青に透き通った物体はキラキラ無数の魚のウロコのような緑の光をつけていて、その色は不気味極まるものだった。

悠々と感じた物体は、しかし忽古松の疎林の梢に沈んで行った。この事について私は世の人に幻覚といわれ気が変だといわれてもそれを甘受する。

百年ののち、いやもっと早く或いは私の生きているうちでもこの謎はとけるであろう。(抄)

「文芸春秋」30年10月号より

参考文献 空飛ぶ円盤研究会 宇宙機創刊号(1956年7月1日発行)

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