銚子事件

銚子事件とは、どんなUFO事件で、当時どのような調査が行われたのでしょうか。荒井欣一さんの手記を基に、できるだけ時系列に書いてみたいと思います。

昭和53年12月号の「UFOと宇宙」の編集者との対談で、一番記憶に残っているUFO事件はと聞かれ、荒井欣一さんは銚子事件だと答えています。

昭和31年9月8日の朝、銚子第四小学校の校庭の隅にまとまって落ちていたという金属片は、長さ4~5センチ、幅1ミリ、厚さ10ミクロンという細かいアルミ箔状のものでした。日本天文学会の会員であったこともあり、歯科医師の滝田氏の元にその金属片が持ち込まれました。その後、日本空飛ぶ円盤研究会宛てに現物が送られ、この金属片の調査が始まりました。

金属片がどうしてUFOと関係しているかと言いますと、フランスなど世界的にUFOを目撃した人は、UFOの通過後にキラキラした金属箔が落下しているとの証言があり、いわゆるエンゼルヘアーと言われていますが、この金属片も同様のものではないかと考えたのです。

荒井氏と柴野氏は、さっそく都立の「工業推奨館」を訪ねて、この金属片の分光分析を依頼しました。後日、同館の「検査証明書」によると、1~10パーセントの鉛が予想外に混入しているのを検出したというのです。

荒井氏は、通常、アルミと鉛は合金し難いものと思っていたので、アルミ箔の大手メーカー「日本軽金属」に問い合わせたところ、同社では「アルミ箔には鉛を入れない」という解答を得ました。

そこで、さらに念を押すため、東京工大の金属学教室の中村正久氏を訪ねて確認したところ、アルミに対しては0.2パーセント以上の鉛を合金することは出来ないということでしたし、同大学の定量分析の鑑定書にも10.9パーセントの鉛が含まれていることが明記されていたとのことでした。

この時、荒井氏は、この結果を見て、地球外の物質ではないかと「がぜん、私たちは色めきだった。」と表現しています。

その後、再度その金属片を調べたいと工業奨励館の松下技師から連絡があったのですが、荒井氏の手元には金属片がなかったことから、改めて金属片を滝田氏からいただいて、10月29日に提出した金属片について結果が次のとおりでした。

● 分光分析の結果、アルミ箔に薄く付着していたビニール状の皮膜内に1~10パーセントの鉛が発見され、黒く粒状に多数点在してが、アルミ箔自体の中にはなかった。

● アルミ箔の片側には簡単な有機染料が塗布してあった。

● ふつうビニールなどの中に鉛が混入する場合は、完全に溶けて透明になるはずであるし、ごく微量ではあるが高価なバナジウムやニッケルが検出されたが、これはあまり類例を見ない。

次に行ったのが、本当に地球外の物質なのかという調査です。

まず始めにその金属片を見せたのが、日本空飛ぶ円盤研究会の顧問をしていた東大の糸川博士でした。博士曰く、この金属片はロケットの発射実験などに使用する金属片と非常に良く似ているとのことで、ビニール被覆アルミ箔は国内では生産されていないが、アメリカでは使用しているとのことでした。

そこで、荒井氏が訪ねたのが、アメリカ大使館の空軍参謀のモラール少佐でした。モラール少佐からは、9月9日には銚子市近辺で演習があったが、7日には実施していないとのことでした。もしこれが電波妨害用の金属片だとすると、大小各種の金属片を落したりするが、一定の小片のみ落すということはあり得ないとのことでした。そしてともかく調べてみるから金属片を預かりたいというのです。

金属片を預けて帰ったものの、その後なかなか返事が来ないので再三催促し、ようやく42日ぶりに電話での回答を得ましたが、単に「落下物はアメリカのものであった。」という簡単なもので、荒井氏の質問に対しては全てノーコメントで、その金属片も手元に戻ることもありませんでした。

それから1年経過した頃、工業奨励館の松下技師から「UFOからの落下物」というこれと良く似た金属片の写真と記事を海外誌から発見したと電話がありましたが、これ以降の調査は行われなかったようです。

そして、荒井氏が銚子事件について語ったのが、昭和53年12月号の「UFOと宇宙」の編集者との対談だと思われます。

「結局、それっきり金属箔はもどってこなかったんですか。」との問いに、荒井氏は、「ええ、それで私はこの10年間というもの、あの金属片がてっきりなくなったものと思って悔やんでいたんですが、最近になってよく探すと少し残ってましてね。やはり警戒して全部は持って行かなかったんですな。もう一度あらためて分析してみるつもりです。」と話をしており、編集者が「新事実が分かりましたらぜひ本誌に発表して下さいよ。」と言うと荒井氏は、「ええ、そうしましょう。」で調査の話は終わっているようです。

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1位【荒井欣一氏にインタビュー「迷宮入りになった銚子の金属箔事件」#4】http://ufonosato.com/blog/?p=2449

参考文献 UFOこそわがロマン 荒井欣一自分史

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