それからこんなこともあったんです。別の日なんですが、彼らのひとりが、また同じような物体を田圃の中で見つけましてね。こんどこそは逃がすまいと思って大事に家に持ち帰り、家じゅうの鍵を全部締めて、その物体の穴に中に針金を通して、堅く縛って机にくくりつけ、これじゃ逃げられないだろうと思って外出したというんだな。しばらくして帰りその部屋の中を見ると、針金は元どおり、窓の鍵は全部しまっているのにかかわらず、その物体だけが消滅しているというんですよ。
そんなばかな話はないから、ぼくは信用しなかったんだけど、当人達は、まさに真剣そのもので話すんですね。
ぼくは彼らに「大人に言ったのか」というと、学校の先生に言ってもバカにされるし、新聞社に電話しても、てんで取り合ってくれないというんです。中学生達は「他の人に言ってもただバカにされるだけで、まったく信じてくれない」と憤慨しているんですね。
それでぼくは「今度、もしその物体が落ちてきたら、おじさんは何を差し置いても飛行機で駆けつけるから、それまで絶対確保しとけよな」と、彼らに約束して東京に帰ってきたんです。
帰ってから、ぼくはあわてて円盤に関する本をひっくり返してしたんだけど、空飛ぶ円盤というのはものすごく大きくて、草むらなどに降りてきたという記録はあるんだけど、こんな小さな円盤というのはまったくないし、まして拾ってバケツの水へ放り込んだなんて話はどこにもないんだな。
もし彼らがウソをついていなければ、その物体がなんであるかもわからないし、ましてなぜ消滅したのかもわからない。
ぼくは空飛ぶ円盤なんかあんまり信じたくないんだけど、この話だけは近ごろ奇妙な話だと思ってね。それがつかまったら、ぜひもう一度、化良へ行こうと思っているんですよ。
もっとも空飛ぶ円盤の専門家に言わせると、そんなことは当たり前だ、小型のものは偵察用で、それが消滅したのは、なくなったのでなくて、われわれが肉眼で見るとき、なくなったように見えるだけだと言うんです。
つまり、物体はあるんだけど、見えなくなったなどと奇妙なこと言うけど、ぼくにはそんなことさっぱり納得できないわけですよ。
むしろ、現在はツジツマが合いすぎるような世のなかで息苦しいから、ぼくはそういう信じられないというか、夢のようなできごとがあれば、どこへでもすぐに飛んで行こうと思っているんですよ。(終わり)
参考文献 日本空飛ぶ円盤研究会 UFO関係記事(マイクロ写真撮影資料の一部)スクラップ記事